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コラム NHK大河ドラマ天地人 天下の趨勢と将星たち


 慶長八年二月十二日、徳川家康は朝廷から征夷大将軍職を賜わり、名実ともに天下の主権者となった。武家の棟梁であり、もはや単なる豊臣家の大老職ではなく、家康は天下の覇者として日本国に君臨することになったのである。
 豊臣恩顧の諸大名である福島正則、加藤清正、浅野幸長らはこの事態に心平らかでなかったと伝承されており、ドラマでは福島正則が豊臣秀頼の御前で憤慨しながら憂慮する場面が放映されたが、しかし彼らは以前に秀吉の織田家の簒奪ぶりを十分すぎるほどに見てきているのだから全然予測できなかった出来事ではあるまい。
 信長が本能寺で横死した後、秀吉は織田家当主の三法師を飾り雛同然にして権勢を奪い取り、その後には成人した織田秀信を崇め奉るだけの置物のように扱っていたのである。
家康が秀頼に対して同じようなことをするであろうことは容易に推察のつくことであり、彼らの心情はかつての織田家の宿将であった丹羽長秀や池田恒興、森長可らが味わった胸中と同じようなものであったろう。
 その時代の趨勢とはいえ、その理不尽さが頭では分かっているのだが、我が「家」の存続と繁栄の為にどうにもならんのである。唯物と観念の狭間で煩悶して悩まされるのも道理といえる。
拝金主義が横行し、人間をまるで物のように扱う現代社会に生きる我々にも同じことがいえるかもしれない。

 時代の趨勢をいち早く読み取り、家康の覇権を予感した加賀国の前田利長は関ケ原役の以前に徳川家に屈服し、家康の恫喝に驚き恐れて実の母親を人質に差し出していたおかげで社稷をまっとうして加賀百二十万石を保ちえたのであるが、こんな逸話がある。
 「不敗の名将」で知られる立花宗茂は関ケ原の合戦に参加していないが、大坂城での徹底交戦を主張してやまなかった。
しかし毛利輝元や増田長盛は家康に対する弁解のことで頭がいっぱいの時だ、どのように言い訳をしたらよいのかでシドロモドロの真最中だったのだ。全然話しにならないのである。
 こうして、宗茂は失意のうちに九州柳川に帰り、その後は肥後の加藤清正の親身な忠告に従って城を明け渡したのであった。
その後、宗茂には数多の大名家から仕官の誘いがかかったのだが、加賀の前田利長からも十万石で召し抱えたいと使者を遣わしてきた。
 宗茂は退屈そうにその使者と対面し、その口上に全然興味を示さず、つぶやくように、
「憎いやつめ。腰抜けのぶんざいで、いろいろなことを言いよる。」といって立ち去ってしまったので、そこに居合わせた家臣たちが冷や汗をかいてその場をつくろうのに苦労したという。
 前田利長の徳川家への屈従の是非は人それぞれに意見の異なるところであろうが、温厚で寛大、人徳の声望があって驕ることなく、功があっても自慢せず、寛容で民に恩を施し、義をもって将士を励ましたといわれる立花宗茂ほどの人でも、利長は好感の持てる人物ではなかったのであろう。


 戦国の快男児で有名な前田慶次も諸大名からの仕官の誘いが多かった人であるが、関ヶ原役の後は、
「追従軽薄、さてさて男は一人もなし。」といって上杉景勝を主君と仰ぎ、米沢の郊外に住んで居候を決め込んだと云われる。上杉家を管掌する直江兼続もこの噂は知っていたであろうから、おそらくは苦笑いしながらも心の晴々とする思いであったろう。

 
 上杉領は三十万石であったが、兼続の卓抜な民政手腕によって五十万石前後になっている。
 
 後年、上杉領は荒地が多いということで幕府から十万石の軍役を免除されているから、実質的には六十万石前後の実収はあったかもしれない。
 

著者HP http://7daiyamonde.blog60.fc2.com/
メールアドレス hokenpuro@yahoo.co.jp 

 

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/10/22 08:23】 | 未分類
不如帰 ~戦国武将の幻影~


Ⅰ<覇王編>~逆賊 織田信長を討て!~  Ⅱ<争覇編>~織田家簒奪!秀吉の野望~

不如帰 戦国人物伝


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