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Ⅱ 織田家分裂



 こうして、柴田勝家は怒気を含みながら日々を悶々と過ごし、大雪を恨む毎日を送っていたのであるが、刻々と推移する戦局の戦略的不利を悟り、ついに雪どけを待たずしての出撃を決意する。

将士を叱咤激励して積雪をかきわけさせ、何度となく払いのけて、凍てつく氷雪を打ち砕きながら進路を確保し、勝家は窮陰酷寒の三月に出陣を強行し、大雪を踏み越えて難路を進軍したのである。
 
これはまさしく男の妄執であったろう。憎悪と野望心に燃える男の執念は、なりふりかまわずどんなことでもする。

 そして、柴田勝家は諸将を率いて越前から近江に進出し、その地の中尾山付近で秀吉の軍勢と対峙することになった。
 
 柴田勝家は織田家屈指の猛将だ。
 
 勝家の出馬を伝え聞いた美濃岐阜城の織田信孝が渡りに船とばかりに再び叛旗を翻し、北伊勢で羽柴勢と交戦中の滝川一益も勇気百倍とばかりに頑強に抵抗する。
 
 近江の中尾山周辺では両陣営ともに複数の城砦を構築し始め、双方ともに相手の出方をうかがい、やがて戦線は泥沼のこう着状態に陥る。
城砦戦とは、防衛陣に拠って相手を威圧する戦術で、先に手を出した方が分が悪いのである。

 
 ここで焦りを覚えたのは秀吉だ。
 
 柴田勝家はなんといっても織田家の宿老筆頭格だったのであり、織田家の武将たちの信頼もいまだに篤い。
実際、秀吉の大親友の前田利家が柴田に味方して出陣している。前田利家は情勢上やむを得なかったという観もあるが、しかし前田利家も、秀吉に肩入れをする丹羽長秀や池田恒興、森長可などの織田家の宿将たちも、もともとは秀吉の大先輩だった人物なのである。だから、厳密にいえば現段階では秀吉の配下ではなく、秀吉の与力のような曖昧な状態だったのだ。丹羽長秀などは柴田勝家と並ぶ織田家の宿老だったのだからなおさらだ。
 しかも、柴田勝家は千軍万馬の猛将であり、織田信長の右腕として辣腕を奮っていたといっても過言ではないほどの人物なのだ。
 泥沼の長期戦ともなれば、秀吉に味方する諸将の中で柴田方に寝返る者も出てくるに違いないのである。
 
 ここは秀吉にとって即戦即決を要求される実に厳しい正念場だったといってよいであろう。

 
 秀吉は、こうした睨み合いの最中での戦局の打開を期し、四月の初旬には中尾山付近に押さえの将兵を残し、本隊を率いて岐阜城を攻めるという名目で美濃の大垣城に入った。
 
 羽柴勢の主力部隊が近江を離れて美濃に集結したわけだから、これは近江中尾山における戦線を放棄したと疑われても全然おかしくない軍事行動なのだ。
この近江の戦線から撤退するかのような奇妙な軍事行動によって、秀吉に味方する将兵たちは激しく動揺し、特に近江の中尾山付近に残された中川清秀や高山右近、桑山重晴らの部隊の士気は著しく低下し、敗戦を見込んで逃亡する者が続出したと云われる。
桑山重晴などは後に展開される賤ヶ岳の戦いでは、諸書によれば賤ヶ岳砦を佐久間盛政の攻撃から死守して武功を挙げ、褒美として二万石に加増されたと伝わるが、しかし詳しく調べてみると佐久間盛政の攻撃に耐え切れないと予測して、持ち場を離れて賤ヶ岳砦を半ば放棄し、上司の丹羽長秀がそれを伝え聞いて驚き呆れ、自ら実地検分して恐ろしく激怒しているから、これは相当以上に士気が低かったのであろう。

近江に残る将兵たちはまさにすて駒・すて石にされたような状況下だったのであるが、しかし、これは秀吉一流の陽動作戦だったのである。

 秀吉は戦局を打開するため、美濃の岐阜城を攻める素振りを見せながら主力部隊を大垣城周辺に展開し、最前線の近江の中尾山から退くことによって柴田勢を誘い出そうとしたのである。

 
 少し余談を書くが、孫子の兵法にいう、「兵は詭道なり。」とは、敵をあざむく為に、それを知られないように水面下で策動し、露見を防ぐために場合によっては味方をもだまし切ることであるが、しかしこれは生死を賭けた戦争であればよく理解できるところであるが、最近はこの孫子の兵法論がブームのようで、書店などには企業の繁栄や商売の繁盛のためにこれを応用的に使えるように工夫して会社向けに解説した書籍を散見するようになった。
「孫子に学ぶ経営学」とか、「企業の繁栄は孫子にあり」とか、なんとかと、よく目にするのである。

 しかし春秋戦国時代の孫子(孫武)は、非常事態の有事の際に限って使用する戦略・戦術論を説いたのであり、これを今の現代日本の治世下において、しかも商売にあてはめた場合には逆に弊害も多く生まれるように思われる。

 そもそも軍隊とは有事の際において、現場サイドの指揮官は独断先行、即断即決が要求されるのである。
軍隊が非常に閉鎖的で非民主的なのは、戦闘とはスピードとパワー、そして素早い的確な判断力とそれにともなう行動力・実行力が必要とされるからである。その際に、いかに少ない損害で相手を打倒するか、その心得を説いたのが孫子の兵法なのだ。これは六韜や三略、尉繚子も司馬法も考え方は同じだ。

相手をあざむき、だまし、出し抜いて、時と場合によっては味方もだまして相手を打倒する手法よりも、最近の流行ではあるが、WINーWINの関係(お互いに利益を共有し、共に栄える)という考え方のほうが商売向きであるように思われる。


著者HP http://7daiyamonde.blog60.fc2.com/
メールアドレス hokenpuro@yahoo.co.jp 

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/12/20 01:11】 | 未分類
不如帰 ~戦国武将の幻影~


Ⅰ<覇王編>~逆賊 織田信長を討て!~  Ⅱ<争覇編>~織田家簒奪!秀吉の野望~

不如帰 戦国人物伝


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