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Ⅱ 賤ヶ岳の衝撃

 一方、近江中尾山周辺で柴田勢と睨み合いを続け、その動静を監視していた羽柴秀長は、さっそく急使を飛ばして敵将の佐久間盛政の突出を秀吉に知らせ、美濃の大垣城からの早急の引き返しを要請する。

 
 これはまさに秀吉にとって待ちに待った好機到来、勝家との雌雄を決する正念場であったろう。


 柴田勢を誘い出す陽動作戦が見事に功を奏したのであるが、しかし、この時点では危険性も実に大きかった。
中川清秀の大岩山砦の落城は、羽柴勢の全軍に衝撃的な動揺を与えている。
柴田方は大いに気勢を上げたであろうし、秀吉に味方する武将たちにしても形勢が不利になれば離反する可能性も十分にあったし、それが災いして全軍が総崩れと成り果てる危険性もあったのだ。

諸書を丹念に調べると、大岩山砦の落城に恐れをなした高山右近、桑山重晴らは持ち場の砦を半ば放棄しかけて、それを伝え聞いた上官の丹羽長秀が激怒している。

通説では高山右近、桑山重晴らは砦を死守して勲功を讃えられたと伝わるが、しかしこれは秀吉の主力部隊が舞い戻ってきたので、これを伝え聞いた砦の将兵たちは勇気百倍し、士気を十分に取り戻したからであったろう。
もし、秀吉の迅速な引き返しがなかったら、佐久間盛政の軍勢にせん滅されて落城していた可能性が高い。

ちなみに、高山右近は勇猛絶倫な武将で敬虔なキリシタン大名としても実に有名であるが、武将としての株は、この戦いの以後はいっきに暴落しているように思われる。
高山右近は後年(天正十三年)、秀吉から播州明石で六万石を拝領しているが、右近ほどの逸材の人であれば十万石以上あってもいいところなのである。しかもこれは秀吉のキリスト教の弾圧以前の時期であるから、なおさらだ。

 
 ここで高山右近のことを詳しく書いては果てしがない。右近のその後の経緯については別の機会に詳述する。


 さて、秀吉はすぐさま近江への引き返しの準備を開始し、急報に接したその日の夕刻頃には全軍を美濃大垣城周辺に集結。


そしてぶっつ続けで兵馬を飛ばし、強行軍に強行を重ねて走りに走り、その夜の内には近江にまで軍旗を進め、夜更け頃までには電撃的な素早さで佐久間盛政勢一万五千を完全に包囲したのである。

引き返すまでに二・三日はかかるであろう厳しい状況下の中で、秀吉はわずか六時間足らずで近江の陣中に舞い戻り、その日の深夜には賤ヶ岳を厳重に攻囲しているのだ。

 まさに、恐るべきスピード戦術である。
 
 これは以前の中国大返しの手法と全く同じだ。その沿道には無数の松明がこうこうと焚かれ、食料や水も十分に用意されていたというから、秀吉は家臣に厳命して事前に準備させておいたのであろう。

 ちなみに食料や水、酒などは、付近の住民から普段の十数倍もの値段をつけてあらかじめ買い付けていたというから恐れ入る。
 
 秀吉の金使いと人使いは本当にうまい。

 
 ここで余談になるが、金使いに関して、「金持ちはケチである。」という風評があるが、しかしこれは的が外れた見解であるように思われる。
 成金のような小金持ちであれば少々理解できないこともないが、本当の金持ちは実に勤勉で教養も豊かであり、博識の高い人が多いのである。
だから、普通の人々がふだん気がつきにくい無駄や、物品の粗末な扱いに敏感で、それが質実な倹約につながるのである。

 話しがそれてしまうが、そのことに関連したおもしろい逸話がある。

 後年の秀吉の唐入り(朝鮮陣)がはじまった頃の出来事。
 
 日根野備中という武将が、その出陣の為の費用に困り果て、ものは試しにといった感じでケチで有名な黒田如水を頼って借りに出かけた。
あまりあてにしていなかったのであるが、
「よろしい。ご用立ていたそう。」と、如水は一つ返事で快く承諾し、すぐさま軍資金を貸してくれたのであった。

 そして後日、日根野は借りた金を返す用立てがついたので、礼品として実に見事な大鯛も持参して金を返しに行った。   

その対面の折り、如水は土産物の大鯛を見て、
「これはみごとな大鯛。家中の者たちも喜びましょう。」と言い、すぐに家臣を呼びつけ、これを三枚におろせとか、頭の部分はこうしてああしろとか、この骨つきの部分を使って吸い物を作れとか、肉で刺身にしてああだのこうだのと、あれこれとやかく本当にこと細かく指図し、最後に、
「その料理を客人にもまいらせ、わしにも忘れずにくれよ。」と言った。

 秀吉の重臣中の重鎮の大名で、財貨の蓄えの多いことで有名な黒田如水ほどの人物が、その鯛を一つ残さず無駄なく食べ尽くすような念の入れようなのだ。「わしにもくれよ。」と言ったくらいだから、
「黒田殿のケチっぷりは本当のようじゃ。これは早く金を返したほうがよい。」と日根野は思い、すぐさま如水の面前に借りた金を丁寧に並べて、平身低頭しながら以前のお礼を述べて差し出したのであった。
 
 しかし如水は全然受け取らない。

「あの金は、はじめから貴殿に差し上げるつもりであった。わしが常日頃から倹約するのは、あのような時に皆々に役に立ちたいと思うからなのだ。」と、澄ました顔で平然と言った。

 日根野は自分の卑しい心根を恥じ、如水の心がけに感心したという。

 古今東西、見栄え・風評などで金持ちに思えたり、実際にそのように見えることも多いが、本物の金持ちというのは目的意識をしっかり持って蓄財に励み、しかし使うべきところでは、大抵の場合は出し惜しみをすることなく大枚をはたいているものなのである。

 欲望にまみれて金集めに狂奔して喜んでいる金持ちとは、雲泥の差であるといったところであろう。
 
 成り金の金持ちは、やがて凋落していつのまにかいなくなっていることが多いが、本物の金持ちはそうではないのである。

 時運があるのも、それは勿論そうなのであるが、普段の心がけが違うからであろう。


著者HP http://7daiyamonde.blog60.fc2.com/
メールアドレス hokenpuro@yahoo.co.jp 

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/12/26 10:42】 | Ⅱ 賤ヶ岳の衝撃
不如帰 ~戦国武将の幻影~


Ⅰ<覇王編>~逆賊 織田信長を討て!~  Ⅱ<争覇編>~織田家簒奪!秀吉の野望~

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