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Ⅲ 争覇 秀吉と家康


 さて、織田家の凡庸なおぼっちゃん育ちの御曹司であった信雄は、秀吉の羽振りの良さがどうしても気に入らない。しゃくにさわる。

「おやじの後継者は、あの猿ごときではない。このわしじゃ!」と、言わんばかりだ。


 一方、秀吉のほうはといえば、その権勢の磐石化を図る為に信雄に対して老練な謀略を仕掛け、信雄主従の内部分裂を誘発する方策に出る。
 心術の策略にたける秀吉は離間の策を用いて、信雄つきの家老らが秀吉に内通しているかのように見せかけた。

 この見せかけ方が本当に老獪で、いやらしいほどだ。腹芸も、ここまでやると腹黒い。


 秀吉はまず、信雄に使者を送り、
「貴殿に内々に話しておかなければならない重要な事があるので、まずはご老臣である津川玄蕃、浅井田宮丸、滝川三郎兵衛、岡田長門守をおつかわし願いたい。」と、信雄がもっとも頼りにしている家老ら四名を大坂に遣わすように伝える。

 この家老たちは信雄の重臣中の重鎮で、信雄の領地内に支城を与えられて織田家中をきりもりしている。
津川玄蕃は伊勢松島、浅井田宮丸は尾張中島郡、岡田長門守は尾州星崎、滝川三郎兵衛は伊賀上野を任されていた。その家老らすべてを秀吉が招いているのだ、
「ほう、よほどに大切なことに違いない。事前に俺に天下を譲る段取りでもするのであろう。猿め、やっとその気になったか、ずいぶんと気をもませおって。」と、信雄はすっかりそう思い込んで秀吉の元に遣わしたのであった。


 
 一方、秀吉はその家老らと対面した折りに、
「今後は、お前たちはわしに味方し、信雄殿は説得せい。戦国の習いじゃ、わかるであろう。信雄殿は右府様の大切な忘れ形見ゆえ、けっして粗略には扱うまいぞ、約束する!」と言ってその場で迫り、起請文を書くことまで強要する。

 これは書かざるを得ない。

 この頃の秀吉は二十有余州を支配する超大名になっている。その石高は五百万石をゆうにこえる。信雄の領地は伊賀・伊勢・尾張で、その石高は百万石に毛のはえた程度だ。これではどう考えても相撲にならない。万が一に戦うことにでもなったら、その家老らの所領も実に危うい。その全てを一瞬にしてコッパみじんに失ってしまう可能性のほうが高いのだ。

 また、幸いなことに秀吉は信雄に対して好意的で温情をかけてくれている。長いものに巻かれるという戦国の習いもある。
 
 即座に断われば、すぐさまその場で殺される危険性もあったのだ。

 しかたがないので書いた。


 こうして、信雄の家老たちは秀吉に味方をする誓約をし、信雄の説得役も引き受け、秀吉に起請文まで取られて帰って行くのであるが、しかし信雄を説得することなど、どだい無理な話しだったのだ。

 秀吉は以前、柴田征伐の折りに、
「いずれは三七殿(信雄)を主人と仰ぎ奉り、生涯に渡ってご奉公させていただきますぞ!」などと、まるで熨斗をつけて天下をそのまま進上いたしますといったような、調子のよいことをさんざん言ってあおり立てていたから、信雄のほうも言われるままに真に受けて、すっかりその気になっていたのだ。
 
 秀吉としては、柴田勝家の擁立する織田信孝との対抗上、信雄のことを政略的にしかたなしに担いでいただけであったのだが、ともかくも世間知らずのアホウな信雄は秀吉の言葉を信じていた。

だから信雄は、その約束を守るそぶりを全然見せないでいる秀吉にイライラしたし、焦慮したし、しまいには憎悪するまでになったのだ。

そのことを秀吉は十分に知っていたし、信雄の家老たちも、もちろん分かっている。

 だから、これは言えない。家老らは困って途方に暮れたろう。

「羽柴に臣従することが御家のため、御身のためでございます。」などと説いたところで、「うん、そうか。」と、素直に聞き入れるはずがない。
逆に猛り狂って激怒するであろうし、最悪の場合、秀吉に内通したと疑われて殺される危険性があるのだ。

しかしだからといって、黙殺を決め込んで黙秘にしておくわけにもいかない。秀吉に起請文を取られているからだ。
後日、秀吉から信雄にその文面を知らされたりしたら、凡庸で直情径行の信雄に裏切ったと疑われて誅殺される恐れがある。

 ここのところが秀吉のずる賢さであり、実に陰湿で狡猾だ。

 どっちみちこの家老らの運命は、信雄の説得に失敗して殺されるか、秀吉に籠絡されて内通して帰ってきたと疑われて誅殺されるか、または、黙秘に耐えられなくなった者がいち早く他の家老らを出し抜き、まっさきに信雄にことのしだいを注進し、信雄の歓心を買って身の安全を図るしかない。

ようするに、秀吉は事前にこれら全てをきれいに見通して、信雄の手足ともいえる家老たちを削いだわけである。



 さて、四人の家老のうちの一人、滝川三郎兵衛(滝川雄利・滝川一益とは別系統の一族)が、早々と注進に走り、信雄の前で洗いざらい全部きれいにぶちまけた。
もちろん、
「悪らつな猿めが、我ら老臣に裏切りを強要いたしましたが、しかしわたくしは生きて信雄様の元に帰って参り、真実を申し上げたほうがよいと考え、窮地を脱する思いで起請文も書きましたが、もとよりこの滝川、二心などございません。」といったような感じの、自分にとって都合のよいように話したのであろう。

ともあれ、信雄は感激して、
「そなたの忠臣ぶり、まさしく忠義無類、実にみごとじゃ!ありがたく思うぞ!」と感動して涙ながらに言い、その他の家老らに対しては裏切りを信じて疑わず、憤慨していきり立った。


そして後日、津川玄蕃と浅井田宮丸は登城した際に信雄から無理難題をふっかけられ、強引に切腹を迫られて自害し、岡田長門守は相当の豪勇の者であったが、やはり登城した際にだまし討ちに遭って土方勘兵衛雄久という勇士に討ち取られてしまった。


著者HP http://7daiyamonde.blog60.fc2.com/

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/01/30 06:31】 | 未分類
不如帰 ~戦国武将の幻影~


Ⅰ<覇王編>~逆賊 織田信長を討て!~  Ⅱ<争覇編>~織田家簒奪!秀吉の野望~

不如帰 戦国人物伝


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