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Ⅳ 争覇 秀吉と家康


 さて、伊勢長嶋城の織田信雄が秀吉の仕掛けた悪辣な離間の策略に見事にひっかかり、自らの手足ともいえるはずの家老らを次々に誅殺という名目で殺害している頃、口八丁手八丁でなんとか信雄の嫌疑を免れていた老臣の滝川雄利は、秀吉との開戦の近いことを予感し、人質として秀吉の元に差し出している息子の奪回を謀りはじめた。
 
 人質を取られての開戦では心苦しくて、このままでは芳しい働きができないと考えたのであろう。

 秀吉の命令で滝川の息子をあずかっていたのは脇坂安治(通称は甚内)であったが、
「我が妻が明日をも知れない重病で、残念ながら危篤の状態となってしまいました。はかなきことになる前に、せめて、愚息にだけは会わせてやりたい。」といったような文面を滝川が送って寄こしてきたので、篤実な脇坂はすっかりそれを信用して同情し、すぐさま人質を返してやったのであった。

 この報告を聞いて驚いたのは秀吉だ、
「甚内のお人好しめ!わしに相談もなく送り返すやつがあるものか!すぐに追っ手をかけて滝川を討ち取れい!」と激怒して厳命を下す。
 
 秀吉の命令書を奉じてやってきた急使の口上に、脇坂は大仰天し、ともかくもすぐさま二十騎ばかりを率いて滝川の本拠地の伊賀上野に向かう。


 伊賀は以前、天正七年に織田信雄の独断専行による軍勢の侵攻があったが、信雄の総大将としての指揮能力の不足、伊賀の剛勇で有名な百地丹波(ももちたんば・伊賀の有力な土豪で、剣豪。伊賀忍者の棟梁の一人であったとする説もある。)の働きなどがあり、この時は織田勢に甚大な被害を与えて撃退している。
しかし天正九年には信長の主力部隊も加わる再度の侵攻によって徹底的に蹂躙され、その地士や良民らが殺戮地獄といえるほどの憂き目に遭っている。

 信長が伊賀の人々の一般的ではない不気味な生態を嫌ったゆえの仕業であるとか、以前の信雄の大失敗の逆恨みの為とする説もあるが、しかし、当時の伊賀は間者(今でいうスパイ)養成の巣窟だったという側面もある。

伊賀・甲賀といえば忍者で有名であるが、伊賀の里の山ひとつ越えた場所に甲賀の里があり、お互いに交流を持って有事の際などは共に助け合うこともあったと云われる。

 伊賀・甲賀は仲が悪かったようなイメージがあるが、これは間違いで、江戸時代に流行した講談や後世の創作本の影響が多分にあり、甲賀VS伊賀にしたほうが話しが分かりやすくておもしろいので後世に根強く伝播してしまったのであろう。

しかし慣習やしきたりなどは、これはかなり異なっていたようで、甲賀者は主君と仰ぐ者に忠義を尽くして間諜を務めるが、伊賀者は金銀などで雇われて請け負った仕事を忠実に実行するだけだったようである。

 だから、当時の伊賀者(秀吉の時代以降は主人に忠実な間諜となって働いていたようである。)は敵味方に関係なく、金で雇われればどこにでも潜り込むということになる。

したがって敵味方の間を自由自在に潜入して行き来する可能性も十分にあるわけで、雇い主は伊賀者の報告を聞いて敵情を知りながらも、その内情が筒抜けになっている危険性もはらんでいたのだ。
現代風にいえば二重スパイの暗躍といったところか。これほど信用できない諜報機関はないのである。

 織田信長は類い稀な情報通だ。諜報がいかに貴重なものであるかを知り尽くしていた人物なのである。
 
かなり以前に別の章に書いているが、情報戦で今川義元の所在をつきとめて討ち取り、間諜を駆使して足利義昭の現況を探知し、そのおかげでその後は義昭の招致に成功して上洛を果たしている。
武田信玄の死も、上杉謙信の死も間諜を通じていち早くその事実を知ったという説もある。
 このような諜報の活用名人が情報の漏えい問題に無関心でいられるはずがない。信長は伊賀者を危険視して憎み立てていたように思えてならないのである。 

 西国の弱小豪族から興隆した安芸の毛利元就は諜報の達人で、敵の間者を逆に利用して敵勢を滅ぼすという芸当までやってのけており、織田信長も美濃攻略の以前までは同じような手段を用いているが、しかしこのような高等戦術は身代の小さい頃に必要とされる手法であり、身代が大きくなっていくにつれて機密の秘匿性が実に重要な課題になってくる。
 
 情報の収集も大切だが、情報の漏えいがまっさきに命取りになりかねないのである。これは現代の大企業も同じことだ。
しかも天正九年の頃といえば信長の覇権はゆるぎないものになっていたから、おそらくは伊賀者のようなダブルスパイの利用価値がなくなり、逆に機密の漏えいを憂慮し、都合が悪くなってきたので邪魔になったのかもしれない。

 目障りなものはことごとく滅ぼす、これは織田信長に限ったことではない。様々な伝記を読んでいて気づくことは、古今東西の英雄豪傑どもの処世術は、
「邪魔者は消す。」の一言に尽きる。
アンチ物の伝記や、偏向のはなはだしい書物では気づきにくいが、歴史上の英雄伝の類書を丹念に調べ上げると必ずといってよいほどに浮かび上がってくる言葉なのである。


 
 ともあれ、脇坂は手勢を率いて伊賀に入り、
「滝川利雄を討ち取った者は、褒美は思いのままぞ!」と、ふれてまわったからたまらない。織田は伊賀の人々にとって憎んでもあきならないほどの仇敵だ、しかも滝川はその地を阿修羅地獄と化した首謀者の信雄の老臣だったのだ、たちまち地士らがわきおこり、あちらこちらから集まり群がりはじめてなかなかの手勢となって伊賀上野城に急迫する。

 滝川は驚いて、辛くも城を脱出して伊勢長嶋城の信雄の元に逃げ込んだ。
 信雄は城を放棄して逃げ返ってきた滝川に不満気であったが、「代地として、そなたに伊勢松島を与えよう。」と言った。

伊勢松島は津川玄蕃の所領だ。

津川は伊勢長嶋城内で雄雄によって謀殺されたが、その領地は津川の親族たちが守っている。つまり、信雄は滝川雄利に、
「自ら切り取って我がものにせよ。」と言っているのだ。
 
 これはずいぶんひどい話しだ。
言うほうも言うほうだが、しかしやるほうもやるほうだ、滝川はすぐさま信雄から手勢をかりて松島城に乗り入り、城兵をことごとく討ち果たして占領したというからこんなばかげた話しはない。
津川配下の武将たちはことごとく離反して秀吉を頼って内通してしまうし、これは典型的な御家騒動なのだ。
「アホウな信雄さまがご乱心なされて、ついに正真正銘の本物になられた!」といった感じで信雄の領内は大騒ぎになって乱麻の状態と成り果てたのである。

 
 滝川雄利の軽率ぶりにはあきれ果てるばかりだが、しかしこれはすべて織田信雄の軽薄短小のアホウぶりの招いた大醜態だったのである。

 
 これが織田信長の実子の仕業なのかと思うと、笑うどころかむなしい寂寥感に襲われ、涙のとめどなくこぼれ落ちるような思いがする。

著者HP http://7daiyamonde.blog60.fc2.com/

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/02/05 17:35】 | 未分類
不如帰 ~戦国武将の幻影~


Ⅰ<覇王編>~逆賊 織田信長を討て!~  Ⅱ<争覇編>~織田家簒奪!秀吉の野望~

不如帰 戦国人物伝


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