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Ⅱ 小牧・長久手の戦い


さて、秀吉は膨大な軍勢を率いて織田信雄の所領である尾張領内にまで侵攻し、小牧山付近の楽田城に本陣を置いて兵馬を集結した。
 
その後、秀吉自らが全軍を督励して士気を鼓舞し、高揚させ、将兵らに命じて小牧山城の周辺に複数の城砦を構築させる。

 羽柴勢は十万以上を数えるほどの大軍だ。

そのような大軍勢が城砦に拠って連合軍側をジリジリと威圧しながら圧迫し、耐え切れなくなった家康・織田信雄を小牧山近辺から追い出してしまうという戦術であった。

 しかし、小牧山城は要害堅固で有名な城だったから、これが全然うまくいかない。

いくら大軍といえども無理な攻城戦を仕掛ければ、羽柴勢の損害は甚大なものになるに決まっているし、秀吉は家康の卓抜な武勇知略を知り抜いていたから、家康の巧妙極まる用兵を警戒して全然動きが取れなかったのである。

 また、ここで下手に大失敗でもしでかしたりしたら、家康につけ込まれる隙を与えることになってしまうから埒のあきようはずもなく、しかも、ここでマゴマゴしていると、秀吉に味方する織田の旧臣たちの動静も未知数なものになってしまう。
 戦国乱離の時代なのだ。寝返りなどは朝飯前なのである。

 秀吉は大いに焦らざるを得ないところであったに違いない。


 一方の家康としては、あんな膨大な軍勢とまともに戦かっては大損に決まっているし、小牧山城は難攻不落の要害でもあるし、このまま長期戦となって、得意の野戦で一つ二つ勝つことができれば織田の旧臣らも味方に馳せ参じる可能性も十分にあるのだから、涼しい顔をして全然相手にしないのである。

 家康は戦局を鑑みながら、気長にじっくりと待つつもりでいたのであろう。


 
 こうして、両軍は長々と睨み合いを続け、その戦況はしだいに泥沼の膠着状態に陥る。

 
 このような戦況の折りに、池田勝入斎が秀吉の元に作戦を進言する。
 
 戦術の概略は、本軍の一部を割いて別動隊を編成し、その部隊を隠密裏に三河国に乱入させて岡崎城を攻め落とし、徳川方に衝撃的な動揺を与え、その後、慌て急いで小牧山城から出撃して三河に入ってくる家康の軍勢を隠密部隊と秀吉の本隊とで挟撃して殲滅してしまうという方策であった。

 これは、当時の用語で「中入り」という。

 敵の手薄になっている地区に別動隊を乱入させて村々を焼き払ったり、城砦を攻め落としたりして敵軍の本陣の動揺を誘う戦法である。
これは成功すると効果は絶大で、戦局が大逆転することもあるが、失敗すると中入り部隊は敵地に深く侵入しての戦闘となるので殲滅的な大損害を被ることも多い。

 当時の武将たちはあらかじめ中入りに用心・警戒して、城砦の堀りを入念に深くしておいたり、柵や櫓を数多く設営するなどして、後々のことを考えて防衛陣地の備えを厳重にしてから出兵しているし、諜報網をいたる所に張り巡らして敵軍の動静を監視できるようしてから出陣する。

 中入りに備えての出陣、これが当時の常識・常道であった。

だから、よほどの名将でない限り、成功は実に難しかったようで、本隊と中入り部隊との連携がうまくいかないと逆効果になってしまう非常に危険な戦法だったのである。

 
 余談だが、上杉謙信と武田信玄の妻女山の攻防戦は、この中入りを知っているか知らないかで面白さが全然違ってくる。
 
 謙信公は、当時の中入りの慣例を全く度外視し、別動隊ではなくて、自ら本隊を率いて敵中の妻女山に本陣を置いて武田勢の度肝を抜いている。
 
 敵の総大将自らの中入りだったのだ。
 これは当時の中入りの常識から全く外れた、まさに常軌を逸した不可解な行動だったのだ。さすがの海津城の高坂昌信も驚嘆し、混乱し、驚き恐れながら信玄公に急使を飛ばして指示を仰ぎ急いでいる。

 一方の信玄公は、中入りの慣例を応用し、奇襲専門の中入り別動隊を編成して妻女山の上杉勢に夜襲をかけさせている。

 川中島合戦の前哨戦、武田・上杉の妻女山での攻防戦は、中入りの応用編・中入りのバージョンアップ対決だったのである。

 話しがそれてしまうのでこれ以上は書かないが、この知略の限りを尽くし切った名将同士の大勝負は実に雄大、実に壮大であり、いつになっても本当に魅了してやまない。

 ふと、脳裏に浮かんで実になつかしいのである。

 
 さて、近年の諸説によれば、秀吉は勝入斎の進言に懐疑的で、内心はこの作戦を危惧してためらっていたのだが、勝入斎はかつての織田家での秀吉の大先輩であり、以前の同僚でもあったので、むげに進言をしりぞけるわけにもいかず、懸念を抱きながらもこの戦術を聞き入れて出撃を許したのだという。

 しかしこの説は、少しまわりくどく考えすぎなのではないだろうか? 

 これは近年の癒し系ブームに便乗したかのような、小児的な発想から生まれた見解であるように思え、人の感情をああでもない、こうでもないとイジクリまわしながら妄想にどっぷりとつかり込み、秀吉の境遇と心情に同情を寄せて、あたかも長久手の戦いに惨敗した秀吉を弁護しているかのようにも思えるのである。

 
 しかしながら、そうではなかったはずだ。秀吉は作戦の成功を確信したからこそ、出撃を許したに違いないのである。
 
 この時代のリーダたちをなめてはいけない。女色に耽り、酒ばかり飲んでいた江戸時代の殿様くんだりとは全然わけが違うのだ。

知力・体力・時の運という言葉があるが、戦国の群雄の中で傑出して頭角を現わした英雄豪傑たちはこれら全てを必ずといってよいほどに要求されたのだ。

運の強い、実力のある陣頭指揮型の人物でなければ、配下の者たちの統率は恐ろしく困難だったのであり、家臣たちに負けないくらいの鍛練・修練を日々積み上げ、常にその実力を家中の者たちに見せつける必要があったはずなのである。

 その証拠に、信長はその生涯を通じて朝駆けを励行し、規則正しい生活を死ぬまで貫き通している。

 秀吉は家中の誰よりも数多くの仕事量をこなし、天下人になった後も、その家臣たち以上に働き抜いている。
 
 家康は探すように時間を割きながら学問に打ち込み、剣術に没頭し、馬術に励んでいる。家康の伝記に精通する方々であればすでに御存じのことと思うが、家康は弓術・剣術はもとより、鉄砲・槍・薙刀・鎖鎌など、ほとんど全て一流といってよいほどの達人になっている。

 彼らは誰よりも修練を積み重ね、鍛錬を積み上げていった行動派だったのであり、たぐい稀な実際家だったのであり、大いなる自信家なのである。 
 
 
 したがって、彼らの精神力は強靱そのものであったはずで、矮小であろうはずがない。

 
 作戦を進言した者がかつての大先輩だろうが、以前の同僚だろうが、そんなことは秀吉の眼中にはないのである。

 要は、現時点において、その作戦が戦術的に優れているかどうかなのである。

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/02/27 00:45】 | 未分類 | コメント(0)
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